ほとんどの病気の真の原因は、水不足にある【後編】

バトマンゲリジ博士の著作から(後編)

(株)I.H.M. 理学博士 根本泰行

 
前回の前編に引き続いて、バトマンゲリジ博士(F. Batmanghelidj, M.D.)の著作 『あなたの身体は水を渇望している』(Your Body’s Many Cries For Water‥未邦訳)をご紹介します。

バトマンゲリジ博士前編では、バトマンゲリジ博士がその数奇な体験のなかで、水が薬の働きをすることを確信するにいたったエピソードをご紹介しました。
今回の後編では水の重要性に関する博士の主張について、簡単にご紹介いたします(カラー部分は著書からの引用です)。

とても単純にみえますが、真実は「水不足によって病気が引き起こされる」ということなのです。
誰でも水は身体に良いということを知っています。
ですが、人の健康にとって水は実際にどれほど本質的なものなのか、そしてまた毎日必要とされる量の水を摂取しなかった場合に、一体身体の中でどんなことが起こるのか、といったことを十分に理解している人はほとんどいません。
水不足によって引き起こされる、病気を予防したり治療したりするための解決策は、定期的に水を摂取することです。

water_pic_04博士の主張のポイントはじつにシンプルであり、まさにここに書かれているように「水不足によって病気が引き起こされる」ということなのです。
そしてその解決策は「水を飲む」ことなのです。

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次に、私たちが成長していくにつれて、私たちの身体の中の水がどのように変化していくのかをみることにしましょう。

成人になった初期の段階から、渇きの感覚が少しずつ失われていきます。
そのために私たちの身体は、慢性的かつ継続的な脱水状態になるのです。
年齢を重ねるごとに身体の細胞の水含量は減少していき、細胞の内側にある水の体積と細胞の外側の水の体積の比率が1.1からほとんど0.8にまでに減少してしまいます。
これはきわめて劇的な変化です。

私たちが飲む水は、細胞機能を支えたり、細胞の中で一定の体積を占めることによって構造を維持したりするので、私たちの日々の水の摂取量は細胞活性の効率に影響を与えます。

このようにじつは一番の問題は、私たちが成人期を過ぎて年齢を重ねるにつれて、自然に”渇きの感覚“が衰えていくというところにあります。
その結果、表面意識では、水を飲みたいという欲望を感じないために、自然に細胞内の水含量が減ってしまうのです。

脱水症状を知らせるさまざまな緊急信号について私たちがよく理解していなければ、こうした慢性的脱水症状があたかも何らかの病気に由来するものであると、私たちは誤って判断してしまうことになるのです。
そのうえ、身体が訴えている渇きの信号は、異常なものと認識され、薬剤を使って処理されてしまうのです。

さらに問題を大きくしているのは、ここに書かれているように、慢性的な水不足によって引き起こされる症状がさまざまであって、私たちはその真の原因が水不足にあるとは夢にも思わずに、何らかの病気であると見なしてしまい、その結果、その症状を抑えようとして薬に頼ってしまうというのです。

人の身体は、水を容易に得ることができる環境にあっても、脱水症状に陥ってしまうことがあります。人は渇きの感覚や水の必要性を正しく認識する能力を失ってしまっているようなのです。
人は年齢を重ねるにつれて、水の必要性に気づくことなく、徐々にそして確実に、身体の中で脱水症状が進行していくのです。
ノドが渇いた時には、お茶やコーヒーやアルコール飲料を飲むことで渇きを癒すことができる、とする考え方も、混乱を大きくしています。
これは極めてありふれた考え方ですが、大きな間違いなのです。

博士によれば、カフェインを含んでいるコーヒーやお茶など、あるいはアルコール飲料では、決して身体の中の水含量を増やすことはできないとのことです。
これらの飲料にはもちろん水がたくさん含まれていますが、同時に利尿作用のある物質も含まれているので、飲んだ水より多くの水が体内から尿として排出されてしまうのです。
従って身体の中の水不足を解消するためには役立ちません。

唇の渇きは、脱水過程で最後に表れる症状なのです。幼児の場合には、唇が十分湿っていても脱水症状に苦しむことがあります。
もっと悪いことに老人においては、唇が明らかに乾燥しているように見えても、水を欲しているということが認識されず、それゆえにその欲求が満たされることがない、ということです。

現代医学では、唇が渇くことが水不足の唯一の兆候として考えられているとのことです。
ですが、この唇の渇きは、じつは一番最後に表れる水不足信号なのです。
つまり、唇が渇く症状が見られたら、それは脱水症状の末期状態にあるということなのです。

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さて、それでは水不足によってなぜ多種多様な症状が表れるのか、ちょっと難しくなりますが、そのメカニズムについての博士の説明は以下の通りです。

身体が水不足に陥った時には、水を摂取するための経路が確保されますが、それに加えて、身体の中で利用可能な水を再分配するシステムが、あらかじめ定められた優先順位プログラムに従って稼働します。
それは、水危機を管理するメカニズムの1つなのです。
その際に、ヒスタミンによって指示され作動する神経伝達物質系が活性化され、水摂取を促進する下位のシステムが活動を開始するということが、今や科学的に明らかにされています。

これらの下位のシステムは、循環している水を分配したり、あるいはほかの部位から採取可能な水を再分配したりもします。
下位のシステムはバソプレッシン、レニン – アンギオテンシン、プロスタグランジン類、キニン類などを媒介物質として利用します。
身体の中には水の貯蔵タンクは存在していないので、身体の中で利用されている水や、すでに取り込まれて身体内に供給されている水を、優先順位に従って再分配するシステムが働き始めるのです。

水不足の状態においては、ヒスタミンと呼ばれる神経伝達物質が重要な役割を果たします。
ヒスタミンはここに述べられているようなほかのさまざまな生体物質に働きかけて、全体として水不足を解消すべく、さまざまなシステムを活性化します。

脱水症状に陥った動物の身体の中では、水不足管理システムが働いて、神経伝達物質であるヒスタミンの生産速度と貯蔵量が増加します。
ヒスタミンとその下位に位置する水摂取と水分配を制御する因子であるプロスタグランジン類、キニン類、そしてPAF(もうひとつのヒスタミンと関連した因子)は、身体の中で痛みを知覚する神経に触れると、痛みを引き起こします。

ここで重要なポイントは、ヒスタミンの信号を媒介する働きをもつ下位の因子群が痛覚神経と接触すると、そこに痛みを生じさせるということです。

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次の文章には、医学界にパラダイム・シフトをもたらし得る博士の主張が2つの要点としてまとめられています。じっくり読んで理解を深めてみてください。

医学において、このような新しい見方を採用することによって、今まで無視されてきた2つのポイントが明らかになってきます。
1つ目は、身体の老化につれて、水はどんどん失われていくものであり、渇いた唇が身体の渇きを示す唯一の指標ではない、ということです。
2つ目は、神経伝達物質であるヒスタミンの生産とその下位にある水代謝に関連した制御因子が過剰に活性化された時には、これらの物質は身体のさまざまな部位でアレルギーや喘息、慢性的な痛みを引き起こしますが、これらの痛みは渇きを示す信号として捉えるべきである、ということです。

すなわち、これらの痛みは、身体の中の水不足を訴えている危険信号のひとつと見なすべきなのです。 このパラダイム・シフトによって、全身的もしくは局所的な身体の水不足症状を示す、さまざまな信号を正しく認識することが初めて可能になります。

2つ目の要点を簡潔に言いますと、身体のどこかで何らかの痛みを感じた時、それは水不足が原因かもしれない、と考えてみるべきである、ということです。

身体の慢性的な痛みは、それが外傷や感染などによって簡単に説明がつかないものならば、痛みが発生している部位における慢性的な水不足を訴える信号―局所的な渇き―なのではないかとまず疑ってみるべきなのです。
(中略)
感染性ではないにも関わらず再発するような痛み、あるいは慢性的な痛みは身体内の水不足によってもたらされたのではないかとまず考えてみるべきです。
これらの慢性の痛みには、胸やけ、リューマチ性関節炎の痛み、狭心痛(歩行や休息時に起こる心臓の痛み)、腰痛、間欠性歩行障害における痛み(歩行の際の足の痛み)、偏頭痛、二日酔いの頭痛、大腸炎の痛みとそれに関連した便秘などが含まれます。

このように、水不足が真の原因となって慢性的な痛みとして表に現れる症状には、じつに多種多様な病名が当てはまります。
そして痛みを止めようとして鎮痛剤を服用する前に、まず水を試してみるべきである、ということなのです。

見方を変えることによって、これらすべての痛みは、毎日の水摂取量を定期的に調整することによって治療することができるのです。
鎮痛剤や、そのほかの抗ヒスタミン剤、制酸剤などの 痛みを取り除く薬剤を定期的に服用することを決める前に、必ず、数日間にわたって、24時間当たり2.5クオート(2.5リットル)以上の水を飲んでみるべきなのです。
(中略)
ただし、もし問題が何年にもわたって存続しているような場合には、腎臓が十分な量の尿をつくり出すことができて、身体の中に過剰の水を蓄積することがない、ということを確認してからにすべきです。尿の排出量は水の摂取量に対して計ります。
水の摂取量が増えれば、尿の量も同様に増加していかなければなければなりません。

このように、水を1日2.5リットルほど飲むことによって、こうした慢性的な痛みを治療することができるのです。
ですが1つだけ気をつけなければいけないことは、腎臓が正しく機能していることが前提であるということです。
また、この本に書かれていることを実際に自分の病気に適用することを考える場合には、専門医師のアドバイスが必要なことは言うまでもありません。

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バトマンゲリジ博士の著書の中では、各種の症状において、どのような仕組みで水不足がその症状の原因となっているのか、また水で治療するにはどうしたらよいのかが具体的に詳しく解説されています。

掲載されている病気の種類はさまざまです。ストレスから生じる鬱病や慢性疲労症候群すらも、脳の内部における水不足が要因となっていると博士は主張しています。

以下にありふれた例として、腰痛の場合を簡単にご紹介いたします。

脊椎関節、すなわち椎間の関節と椎間板構造の働きは、椎間板の中核部や脊椎骨の平らな表面を覆っている末端軟骨組織に貯蔵されている水のさまざまな水力学的な特性に依存していることをよく理解しておくことが必要です。

脊椎関節においては、水は互いに接触しあう表面で潤滑油の働きをしているのみならず、椎間にある椎間板の中核部にも保持されていて、身体の上半身の圧縮重量を支えています。

ゆうに75%を越える身体の上半身の重量がこの椎間板の核に貯蔵されている水によって保持されており、残りの25%は椎間板の周りにある繊維質によって支えられています。

少し難しい言葉が出てきますが、要は、背骨の関節1つ1つに水が蓄えられており、身体の重量を支えるうえでこの水が重要な役割をしている、ということです。

これらの関節のほとんどにおいて、時折形成される真空状態が関節に向かう静かな水の流れをつくり出します。そして関節の活動によって生み出される圧力によって、水は外へと搾り出されることになります。
腰痛を防ぐには、十分な量の水を飲んだうえで、水を椎間板の空間に引き入れるのに必要とされる、時折の真空状態をつくり出すための一連の特別な運動を行う必要があります。

これらの運動は、背筋の痙攣をも和らげます。この背筋の痙攣が、じつは多くの人々にとって、腰痛の主要因になっているのです。正しい姿勢をとることも必要です。

これもまた少し分かりにくいかも知れませんが、簡潔に言えば、背骨の関節に水が十分量しみ込んでいないと腰痛になる、ということです。そして腰痛を解消するためには、水をたくさん飲むことと、背骨の関節の中まで水をしみ込ませるために特別な運動をするのがよいということです。

なおついでながら、腰痛を治すために具体的にどのような運動をしたらよいかということについては、ここではこれ以上触れる誌面がありませんが、博士は『腰痛とリューマチ性関節炎に取り組む方法』という著書、ならびに『腰痛に取り組む方法』というタイトルのビデオの中で、詳しく解説しています。

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このように私たちが普段思っている以上に、水(水不足)はさまざまな症状の根本原因となっているのです。そしてまた普段から水をたくさん飲むことによって、たくさんの病気の発症をあらかじめ予防することができるのです。

博士は水の種類についてはとくに言及していませんが、私たちとしては、身体の浄化にも大きな効果のある蒸留水をご愛飲いただくことをお勧めします。
また、蒸留水に特別な波動を転写した「お水さんありがとう」は、水が構造化されているので、細胞内により浸透しやすい形になっています。そして水を必要とする部位に速やかに到達していくことができるので、お試しいただければ幸いです。

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参考資料 バトマンゲリジ博士(F. Batmanghelidj, M.D.)のホームページ
http://www.watercure.com/
著書『あなたの身体は水を渇望している』 (Your Body’s Many Cries For Water:未邦訳)