世界が注目!麻の注目成分CBDとは何か?

 近年、海外において麻の有効成分であるカンナビジオール(以下、CBDと略)が注目されています。
I.H.M. WORLD 2016年10月号 麻の有用性について、(株)IHMは20年以上前から会報誌等を通じて、読者の皆様にお伝えしてきましたが、一般的には、大麻、あるいはマリファナなどの禁止薬物が連想されるために、「大丈夫なのか?」と眉をしかめる方も多いかもしれません。
 しかし、それは事実の一面をみているに過ぎないことが今回のインタビューでお分かりいただけるのではないでしょうか。
 一方で現在、大麻に関する研究が進み、麻の持つ薬理効果―言い換えれば生体への健康効果―については、もはや否定出来ない段階に来ています。
 今回は、その麻の生理活性について、特にCBDの薬理学的働きと未来の可能性について研究をされている昭和大学薬学部の佐藤均教授にお話をお伺いしました。
 佐藤教授は温厚ながら非常に柔軟な感性をお持ちであり、穏やかさの中に、情熱が感じられる方で、お話も楽しく、あっという間に時間が過ぎ去ってしまいました。
 読者の皆様にそのような部分も共に伝われば幸いです。

I.H.M. WORLD 2016年10月号より


──CBDとTHCは区別されるということですが、一体どのように違うのですか。

佐藤 CBD(カンナビジオール)とTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、共に大麻に含まれる成分です。 両者の分子式は全く同じですが、構造式が異なるため、全く別の作用をします。
 THCは非常に精神作用性が強く、脳内にあるCB1レセプター(神経細胞上に多く存在する受容体)に親和性が高いです。精神錯乱や幻覚・幻聴を引き起こす可能性があり、日本の法律で禁止されている成分です。脱法ハーブ・危険ドラッグなどはTHCを模した化学合成された有効成分が多く含まれているので、強烈な作用を引き起こします。
 一方、CBDは、THCと比べると、構造式の中で環状の部分が一部開いていて、CB1レセプターへの親和性が非常に低く―もしくは親和性がなく―精神・神経系への悪影響はありません。ですが、医学・薬理学的研究は1000件にものぼり、それ以外の作用に注目が集まっています。それもCBDが、安全な素材成分であるからなのです。

カンナビノイド受容体



↑体内には、地球上で生きていくために本来備わっている身体調節機能=ECS(エンド・カンナビノイド・システム)があります。ECSは、食欲、痛み、免疫調整、感情抑制、運動機能、発達と老化、神経保護、認知と記憶などの機能をもち、細胞同士のコミュニケーション活動を支えています。ECSは、1990年代に発見された「アナンダミド」と「2-AG」と呼ばれる体内カンナビノイドとそれらを結合する神経細胞上に多いカンナビノイド受容体CB1。免疫細胞上に多いカンナビノイド受容体CB2などで構成され、全身に分布しています。最近の研究では、ECSは外部から強いストレスを受けたり、加齢に伴う老化によってECSの働きが弱り、いわゆる「カンナビノイド欠乏症」になると、様々な疾患になることが明らかになってきました。CBDは、これらの全身にある受容体に直接的に働きかけることで、本来のECSの働きを取り戻すことが出来るのです。(日本臨床カンナビノイド学会編『カンナビノイドの科学』の一部を抜粋した小冊子より)


──なるほど、CBDは忌避されるべきTHCとはまったく区別される成分なのですね。ところで、CBDは麻のどの部分から抽出されているのですか?

佐藤 現状、法律では、麻の穂、葉、根の所持や加工が禁止されています。茎と種については、問題ありません。麻の実や油、繊維として産業利用されています。サプリメントとして利用されているオイルなどは種子油を使って製品化されています。
 法律を遵守して、茎と種から抽出されたCBDのみが利用されています。精神に悪影響を及ぼすTHCは含まれておりません。
 医療や産業で使用される麻は品種改良が進み、THCが少なくCBDを多く含む品種が活用されています。

麻について[THCとCBD、カンナビノイド]
カンナビノイドとは大麻に含まれる薬効成分の総称で、テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)など多数の化学物質が含まれます。精神作用のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)は日本での使用は禁止されている。CBDには痙攣、不安神経症、炎症、嘔吐などの緩和と癌細胞の成長の抑制に作用する。さらに近年の研究により統合失調症に対する非定型抗精神病薬としての効果があることが示されている。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア』 (Wikipedia)



──CBDは海外では、どのような状況にありますか?

佐藤 大麻については、世界的に使用を認めようという動きが、少しずつではありますが見られます。アメリカやヨーロッパの一部では嗜好性の大麻もOKという国もあります。カナダでは、2017年度から大麻の使用を合法にする方針を発表をしています(医療用大麻はすでに合法化されています)。
 もちろん大麻を禁止している国が圧倒的に多いですが、嗜好品としての需要が、タバコやお酒から安い大麻に移ってしまうと産業的にダメージを受けるという理由もあるようです。
 海外でも医療用としてのCBDの製品ももちろんあるのですが、有効成分を抽出する製造コストのため価格が高く、大麻に対して厳格ではない地域では、安い大麻を利用する人が多いのが現実です(CBDの効果もあるが、THCの作用がより強い)。
 医療用としての効果は、世界的にも更に研究が進むことと思います。
 ただCBDは既知の成分であって、製造特許などが無いため、大手の製薬会社は手を出さないだろうと思います。
 海外では、イギリスの製薬会社を始めとして、数社が薬として販売していますが、THCも含まれているため、日本国内に輸入することは出来ません。

──人体への影響を教えてください。

佐藤 例えば「 癲癇てんかん」の場合ですが、症状として脳内の過剰活動により異常な興奮状態が続きます。癲癇の発作の際の過剰な神経伝達がCBDによって抑えられることが分かったため、CBDが注目を浴びることになりました。
 他に、痛みを抑えるという場合、抑えすぎても困るということがあります。CBDには「適正な範囲に戻す」という優れた利点があります。
 西洋医学の薬は、血圧を下げる場合、徹底的に下げることが出来ます。血糖値を下げる薬も同様です。低血糖状態になるまで、血糖値を下げることが出来ます。
 CBDの場合、安全で有用な他の成分との総合的な作用により、副作用は無く、正常な状態に近づけることが可能なのです。
 高すぎるものは下げて、低すぎるものは上げるといった具合です。量においても、多く摂取したからといって副作用が起きる心配もありません。
 ホメオスタシスを活性化し、調整する「エンド・カンナビノイド・システム(身体に本来備わっている調節機構の一つ)」の働きを良くするとも言えるでしょう。
 最近では、悪性腫瘍に対する効果などが学術論文として発表されています。
その他、痛み、痴呆、免疫疾患、中毒、ストレス全般など、マウスや実験レベル等の発表も含めて、
非常に多種多様な症例に有効である、という報告がたくさん寄せられています。

麻について[医療面での研究]
近年、イギリスやカナダのように大麻についての科学的な調査・研究、医療利用への積極的な支援を行う国が出てきており、法規制を受けることなく動物実験、臨床試験を行える研究機関、研究者も存在する。大麻は毒性が低く急性中毒で致命的となることはほとんどない。喫煙、気化、飲食により成分を摂取することで用いられる。規制のない成分カンナビジオール(CBD) が日本に輸入されている。日本では、大麻を用いた臨床試験は麻薬及び向精神薬取締法により、麻薬研究者でない場合禁止されている。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア』 (Wikipedia)
日本臨床カンナビノイド学会編『カンナビノイドの科学』の一部を抜粋した小冊子より
↑日本臨床カンナビノイド学会編『カンナビノイドの科学』の一部を抜粋した小冊子より。



──CBDはどのように使用するのですか。

佐藤 CBDは主に、オイルなどに混ぜてあるものとクリームに混ぜてある2種類があります。
 オイルの場合は、舌下に垂らして出来るだけ口の中に含むことによって吸収させます。
 皮膚の細胞にはCBDの受容体があるので、皮膚にクリームとして塗ることも出来ます。皮膚の再生を促進するという研究データも発表されています。
 CBDには習慣性も副作用も無いので、いろいろな方法で、安全に使うことが出来ます。

──これから、CBDは普及するのでしょうか。

佐藤 今、時代はセルフメディケーションです。自分自身で健康を管理したり、傷病・症候を判断して医療製品を使用したり、あるいは疾病を治療したりするためのセルフケアのことです。膨れ上がる医療費の抑制にもなるため、行政も推奨しています。
 何でもかんでも医者に診てもらって、薬をもらう時代では無いのです。
 症状がまだ表面化していない「未病」の時に快方に向かわせる、あるいは未病の状態を長く保つ、すなわち進行を遅らせる、ことは大変重要なことなのです。
 地球上で脊椎動物が誕生した時に、複雑なメカニズムを維持するためにエンド・カンナビノイド・システムが備わったという仮説もあります。
 ということは、人間はもちろん、犬・猫を含む脊椎動物全般に対して、良い作用を及ぼすのではないでしょうか。
 ただ、子供の成長期においては、身体の成長を阻害する可能性があるという研究報告もあるので、現時点においては注意が必要です。
 症状が重い場合など、作用が副作用を上回るのであれば使用することが良いと思いますし、症状が軽い場合はCBD製品等の濃い成分ではなく、CBDを微量に含む麻の実や麻のオイル等の食品から摂取するのが良いと思います。
 妊娠時においては特に問題は無いと思いますが、前述の理由から麻の実や麻のオイル等を摂取するのがより良いのではないかと思われます。

ストレスフルな環境にこそCBDを

 現代の病気の原因は主にストレスに起因するといっても過言ではありません。
 CBDを摂取することにより、タバコや飲酒の回数や量が減ったという事例もあります。タバコや酒は嗜好品なので、適度に摂取すればストレス発散にもなりますが、過度に摂取すると中毒状態になります。まさにストレスによるものと言っていいでしょう。CBDは、ストレスを軽減させ依存傾向を緩和する働きがあるでしょう。
 PTSD(心的外傷後ストレス障害)に効果があるとの報告もあります。何かの拍子に嫌な記憶がフラッシュバック(突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象)して苦しむこともありますが、CBDの服用によりストレスが低減され、フラッシュバックの回数が減って、悩まされなくなったとのことです。
 癲癇については前述しましたが、ストレスを低減し、脳をより安定した状態に誘導して、神経を鎮めます。
 ストレスが多い現代において、CBDはとても助けになると思いますし、さらなる研究成果を期待したいと思います。
 このCBDの本質をよく理解され、多くの方々に普及出来れば、必ずや多くの方々の笑顔を取り戻すことにつながり、ひいては大きく社会に貢献できると信じております。またそうなることが私の夢であり、医師としての本懐でもあります。

──CDBが、私たちの心身の健康に十分役立ち、将来性のある素材であること、まだまだ未知の可能性に溢れていることがよく分かりました。 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

カンナビノイドの科学日本臨床カンナビノイド学会編『カンナビノイドの科学』。
CBDについて非常に詳しく解説しています。佐藤均教授が監修しています。